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アデオジャパン

目指すべき目標は、そのNGOが要らなくなること。でも結局そうはならなくて。

目標と現実の乖離

ADEOは手掛けているプロジェクトがたくさんありますよね。現地のNGOなどが同じ内容で活動していたりするんですか。

前田:そうですね。たとえばダダーブはすごく大きいプロジェクトサイトです。47万人の難民に対して、本来政府が担うべき行政サービスを提供することが、そこにいるNGOだったり国連の役割になるので、国連機関とNGOを合わせてだいたい25くらいいます。

ダダーブ全体で、たとえば「保健医療」「居住」「食糧」「水」「教育」といった支援分野があって、そのうち「保健医療」「食糧」「教育」のそれぞれの分野で、いくつかあるNGOのうちの1つがADEO。他のNGOさんや国連機関だったりもそれぞれプロジェクトを持って運営していますが、役割分担してそれぞれの専門分野に従事しているって感じです。

NGOは互いに協力し合っているのですか。

前田:そうそう、そこが面白いところで。協力もするんですが、やっぱりNGOの競合があるんですよ。ダダーブ難民キャンプでは、みんなだいたいUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)からお金をもらっているので、自分が駄目だったら他のNGOにお金が回ることになり、NGO間での競合がものすごく激しい。

さっきのSGBVという分野とか、まさにそう。SGBVの分野で動いているNGOってたくさんあるんですよ。ただ、そこの競合があまりにも激しくて、どこも横のつながりを持とうとしないし、情報共有をしようとしないんですね。「今月レイプ被害が◯件ありました」というデータも各NGOごとに持っているので、「ダダーブ難民キャンプ全体で◯件」という数え方には絶対ならないんです。それは問題なので、ダダーブ全体のコーディネーショングループを作るべきじゃないかという意見が出て、ADEOの代表として行って関わりました。

コーディネーショングループがなかったのには分野独特の理由があります。たとえば、レイプ被害の件数を聞いた場合、件数が以前より減っていたら成果が出ていると思うじゃないですか。レイプ被害を防止するためにNGOたちが頑張って、その成果が出てレイプ件数が減ったんだ、とUNHCRなどのドナーは思う。でも実際のレイプ件数は変わっていないんですよ。表面上に出てくるものが減ったか、増えたかという差なんです。だから件数が増えることは、人々が被害を報告できる環境になっている、被害を報告する場所があるという認識が人々の間に広まった、ということを意味するんですね。だから件数が増えた方が、実際の状況としてはプラスなんです。

でもそれをドナーが理解していない。件数が減った方がいいと考えていたり、件数が増えるとNGOがちゃんと仕事していないからだと言って供出金を減らそうとしたりするんです。そういう理由があって、件数を大きくしてしまうからコーディネーショングループで情報共有をしたくないという心理が働いて、結果としてそれぞれが独自に動き、まとまった対策が打てていないという状況でした。

現地で活動していて、難しさを感じることはありましたか。

前田:NGOとして一番難しいと思ったのは、やはりお金がつきやすいところにお金がつくんだな、ということ。たとえば、ダダーブ難民キャンプの支援活動の中でHIV対策は大きな分野なんですね。やっぱりアフリカではHIVが問題だと世間一般に認識されているから、アフリカでのHIV対策というだけでお金が潤沢に入るという状態なんです。

でも蓋を開けてみると、ソマリアはアフリカの中ではHIV感染率が低くて、1%以下なんですね。それはダダーブでも一緒で、1%以下の受益者に対して、ものすごく潤沢なお金を使っている状況だったんです。だから、世界難民の日や世界平和の日にあるイベントでは、傍らで常にHIVについての啓発のブースが出ているなど、HIVに対するサービスはものすごく丁寧だし、ものすごくしっかりしているんです。それはそれでいいことだし、サービスの継続や向上を目指すのは大事だとは思うんですけど、もうちょっと他にお金の回し方があるんじゃないのかなとブシアに行った時に感じました。

ADEOはブシアでもHIVの活動をしています。そこでの感染率は一番ひどいときには25%くらいあったんですが、ADEOを含めいろんな団体の努力によって今9%くらいになっているんですね。ものすごく良くなったんです。それでも1%と9%を比べると、明らかにブシアの方が受益者数も受益者の割合も多い。でもブシアに対してはお金はほとんど来ないんです。言ってしまえば、ぱっとしないんですよ。だからお金もつかないし、プロジェクトを回す人もいないので、HIVの事業はちゃんと行われていないんですね。

9%の受益者に対してちゃんとサービスが提供できていない一方で、難民キャンプでは1%の受益者のためにたくさんのお金が使われる現状を見て、お金の使い方、回し方の難しさを感じましたね。でもNGOとしても、その中から自分のお給料も出ているので、もらえるものはもらわないといけないし、要らないとも言えない。

それはどのように克服してばいいのでしょうか。

前田:うーん。根本的なところでは、NGOがどう動いているのか、職員の給料がどこから出ていて、そのNGOがどのように存続しているか。それってやっぱりNGOの意義にも関わってくると思うんですよ。

NGOの目指すべき目標は、そのNGOが要らなくなることだ、とよく言われるじゃないですか。何か問題があり、それに対してNGOが設立されて、活動し、最終的にはそのNGOが必要なくなったときにいなくなる。それが理想だ、と。でも結局そうはなりません。NGOには、雇われている人がいて、養わなきゃいけない職員がいる。問題がなくなったから、「はい、じゃあNGO潰します」ってなるかというと、そうはならなくて。そこに問題があろうとなかろうと、NGOを存続させなきゃいけない。

ダダーブでのHIV対策もそうだと思うんですよ。そこに問題はなくはないけれど、大きくはない。でもそこでお金がもらえるんだったら、問題の大小に関わらず、もらえるものはもらわないといけないし、そのお金でNGOの職員を養わなきゃいけない。NGOとしての意義を職員が自覚しなきゃいけないのはもちろんだと思うんですけど、自覚したところで改善するかというと、そうでもない気がします。ドナー側のもうちょっと本質的な理解が必要かなとは思いますし、NGO側としても実情をちゃんと理解してそれを正確に伝える、説明することが必要だと思います。難しいですけどね。

日本でのジレンマ

日本での活動の中では難しさを感じるときってありますか。

村岡:はい。活動をするときに、ゴールがはるか遠すぎて、なかなか道筋を描けないことが課題だと思います。たとえば難民キャンプに対する支援だったら、まず緊急援助としてその人たちの生命が困らないレベルまで支援し、開発援助として生活を向上させ、結果的に難民がソマリアに帰りたいと考えたら帰れるくらいの環境を整えるのがきっとゴールだと思うんです。でもそこまでの道筋が、自分にはなかなか見出すことができない。現地で動いているNGOならもっと身近な問題として扱えると思うんですけど、日本でイベントを打って、それがどれだけの影響力を与えられるのかっていうのは、いつも疑問に思いながら活動しています。

そもそもアデオジャパンの大きいゴールは何ですか。

前田:理念としては、簡単に言うと日本とアフリカをつなげ、人々が互いに共存、思いやり、親近感を抱くことによって、世界の遠く離れたものをちょっと近づけること。HIVもそうだと思うんですよ。アフリカだけでなく日本の問題でもあるという点で、認識を共有できるところを見つけて、社会に発信するなり自分たちで深めていく。綺麗な言葉で言えば、互いのことを思いやった共存を目指しています。

さらにそれをブレークダウンすると、いろいろなプロジェクトごとのゴールになるんだと思いますが、その道筋が見えにくいのですね。

前田:たとえば、難民キャンプ内に堆積するたくさんの問題に対して、日本にいるアデオジャパンのメンバーという立場だと、自分一人では小さすぎるし、アデオジャパンという団体も小さすぎて、それらの問題の解決には、どう頑張っても届かないじゃないですか。そのモヤモヤ感はあるのかもしれない。

(続く »)

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Written by wakamonoiz

2012年9月30日 at 1:40 AM

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