Wakamonoiz

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がけっぷちの生物多様性キャンペーン

マクロな視点から世の中のルールを変える。
国際会議の場にユースの声を届けたい。


がけっぷちの生物多様性キャンペーン実行委員会:江口健介さんインタビュー
公式サイト
Twitter公式アカウント:@youth_cop10

がけっぷちの生物多様性キャンペーンは2010年11月に開催される「生物多様性条約第10回締約国会議」(COP10)に向けて、アクションや政策提言を通じて政府や市民に生物多様性の重要性を訴えていく活動を行っています。
COP10は、今後の生物多様性を守っていくためにどのような制度を作る必要があるのか、各国がそれぞれの国益を代表して交渉する会議です。名古屋で開催され、日本が議長国を務める今回の会議では「ABS」「ポスト2010年目標」の2つに焦点が置かれています。
開催国、日本のユースとしてCOP10に向けた活動を行うがけっぷちの生物多様性キャンペーン実行委員会から、江口健介さんにお話をうかがいました。

— まず始めに、「がけっぷちの生物多様性キャンペーン」の活動の概要を簡単に教えて下さい。

「がけっぷちの生物多様性キャンペーン」(以下「がけいき」)は、今年の10月にCOP10(生物多様性条約の第10回締約国会議)が日本の名古屋で開かれるのですが、そのCOP10に向けて働きかけることを目的にユース、大学生や若手の社会人などの主に若い人が参加して活動している組織です。「がけいき」は一つの団体というより、A SEED JAPANととエコ・リーグという環境NGOがそれぞれメンバーを出し合って、共同で活動しているキャンペーンですね。

— それではこの活動を立ち上げたきっかけを教えて下さい。

もともと代表の松井が、特に植物がすごく好きで、生物多様性の問題に対して思い入れが強く、生物多様性が失われていくことや、森林が破壊されていることに対して強い危機感を持っていたというのが一つあります。

また、もう一つのきっかけとして、A SEED JAPANの活動の中で、2008年に北海道洞爺湖で開催されたG8サミットに向けて僕と松井が一緒に活動した経験も大きいですね。そのG8サミットは温暖化が主要テーマで、先進8カ国だけのけっこう閉鎖的な会議だったので、今回のCOP10とは若干毛色が異なるのですが、そういう国際会議に向けて自分たち青年の声を届ける経験や、そこで話し合われてることが自分たちに関係してるんだといった気付きがすごく大きくて、自分たちもそういう活動をリードしていく存在になりたいと思いましたし、そこで気付いたことを他の多くの若者とも共有したいという思いも持つようになりました。生物多様性というイシューへの思い入れと、国際会議に青年の声を届けたいという二つが立ち上げの主な理由ですね。

他にも、松井が両方の団体に関わっていたというのも理由の一つです。A SEED JAPANは、1992年の地球サミットがきっかけで発足してからずっと、京都での温暖化のCOP3、2002年のヨハネスブルグでの地球サミット2002などの、国際会議に自分たちの声を届けるということをしてきました。エコ・リーグはA SEED JAPANから生まれた団体なのですが、全国の環境サークルを繋げてより多くの若者が環境問題の解決に携われるようにする活動を行っています。A SEED JAPANが一点突破なイシューの解決を目指していて、エコ・リーグの方はより広い取り組みを行っていて、両団体に関わってきた松井がこの機会に両方の団体の良さを合わせるようなことをしてみたいと思ったのも立ち上げの理由の一つです。

— この活動を通じて働きかけたい対象は、人で言うと誰、もしくはどの層になるのでしょうか?

自分たちはCOP10に向けて働きかけているので、政府などの政策を決定する人たちというのが一つ。もう一つは一般的な市民全体、その中でも特に若者、ユースに働きかけたいという、大きく分けて二つですね。前者ですが、自分たちがこうして欲しい、こうしようよ、というイシューを実際に決める人たちですので、その人たちを無視したキャンペーンでは国際会議に働きかける意味が無くなってしまいます。環境省や他の政府の担当者にもどんどん働きかけて、自分たちの声を感じた意志決定をしてもらいたいなと思っています。

後者に関しては、生物多様性というのが非常に認知度が低いテーマなので、より多くの若者に生物多様性の価値を認識して欲しい、また、自分たちがG8サミットの経験から感じたように、世の中の仕組みが決まる国際会議に対して働きかけることの意義を訴えたいと思ってます。

— 現在のキャンペーンで活動しているメンバーは、A SEED JAPANから来たメンバーとエコ・リーグから来たメンバーで構成されているということですが、異なる団体から来た多様なメンバーをまとめるという点で難しさは感じますか。

めちゃめちゃありますね(笑)。「がけいき」の組織は、代表に松井がいて、それをサポートする形でA SEED JAPANから来た副代表の僕、もう一人エコ・リーグから来た今井という副代表がいて、その3人体制が意志決定の基本になっています。

自分は「がけいき」の副代表と同時にA SEED JAPANの共同代表もしていて、それ自体は何かしらの義務を負っている職務ではないのですが、やはり今年のA SEED JAPANの活動の成果に代表として責任を持つべきだと自分では思ってます。一緒にやっているエコ・リーグがどうということではなく、割と経験の浅いメンバーも受け入れるのが「がけいき」のスタンスなんですけど、A SEED JAPANは割と少数精鋭な活動を行ってきたので経験の浅いメンバーとどこまで一緒にやれるのか、どのくらいの覚悟を強いれるのか、というのが難しいですね。

それに、自分の所属団体からプレッシャーもかかってきます。もしかしたら今井君もエコ・リーグからプレッシャーがかかってるかもしれない。それとの折り合いが難しいですね。

— それでは活動の中身について伺っていきたいと思います。COP10のような国際会議において、政策提言型のアプローチで活動することの意義というのを話して頂けますか。

まず第一には、仕組みに働きかける活動ということですね。日常生活の中でマイ箸を持つとか、レジ袋うんぬんというのも大事ですけど、それって影響力は小さいですよね。例えば、レジ袋の話で言うと、1000人の学生の意識を変えるよりも100人の主婦の意識を変えたほうが良くて、それは使う量が全然違うから、さらに言えば10人の小売り店の社長の意識を変えた方が良くて、それよりもさらに1人の政策決定者の意志を変えたほうが良い。そういうのが僕らの考え方の一つで、仕組みやルールを変えていかないと根本的には変わらないし、1000人の学生の意識を変えたって根本的な解決じゃないかもしれないってことですね。国際会議ってまさにルールが決まるところで、今年のCOP10で決まることも今後、国内の政策に反映されていきます。そういう意味ではマクロな視点で仕組み・ルールが良い方向にいくようにアプローチするのが大事かなと。

もう一つ、個人的なことなんですけど、活動してる自分自身が関心を持つんですよね。G8サミットに行って何が変わったかと言うと、基本的なことなんですけど新聞をけっこう読むようになりましたね。それまでも嫌いではなかったんですけど定期的に読もうとはしていませんでした。G8の活動をしてからは、あれは温暖化の交渉だったので温暖化の交渉は今どうなっているのか、その裏で今経済はどうなっているのかなど、知らなきゃまずいなという意識が自然と湧いてきます。新聞を読まなきゃ、新聞に書かれていることは決して無縁じゃない、というのは自分にとってはいい気付きになったと思います。

— 政策提言型のアプローチというのは、大変な部分もあると思うんですけど、デメリットを感じる点、または活動がうまく周囲に発信できているのか、など問題を感じることはありますか。

いくつか課題に感じていることはあって、一つは英語能力ですね。国際会議の文書は基本的に英語なんで英語能力が要求されて少しつらいなと。

ただ、もっと大きな課題もあって、それは政策提言というのは非常に息の長い活動だということですね。今までにどういう交渉があって、COP10ではどういうテーマが取り上げられて、それが今後どっちに転んでいくのかというのは、COP10という一つのタイミングだけの話では全くなく、一連の活動の流れの中にCOP10のタイミングがあるだけなんですよね。その息の長い活動を自分たち若者がどこまでできるかというのはけっこう壁で、苦しいなと感じる部分ですね。基本的に学生は飽きっぽいですし、団体を4年間で卒業するのが普通なんで、ノウハウを継続的に蓄積していくとか、国際会議の情報網を継続的に蓄積していって、その都度、意思決定者とパイプを持ってる人がいる状態にするというのは難しくて、そういった継続性の点は厳しいものがありますね。

もう一つの課題は専門性ですね。やはり、国際交渉に対して働きかけるには相当な知識が必要で、ただ単に生物多様性を守れとか、レジ袋を失くせ、っていうのは誰にでも言うことができるけど、それだったら国際会議という場で言う意義は全然無くて、国際会議で発言するということは、その国際会議で決まるものを左右するような言葉でなくてはいけない。そうすると、それを裏打ちさせるような知識や勉強が必要なんですけど、その専門性を若い人や学生がどこまで担保できるかというと極めて怪しいところがあります。「がけいき」の活動をしているメンバーでも、文系の人やそもそも生物の知識がそんなに無い人もいる中で、生物多様性を守るためにうんぬんって発言するある種の正当性があるかというと、ちょっと怪しさを感じるところもありますね。

— とはいえ、「がけいき」のサイトに載っていたポジションペーパー(※)を拝見したところ、学術的な情報も入っていて、専門で大学や大学院で勉強している方が作られたのかなって感じるくらい密度の濃いもののように思えました。やはりポジションペーパーの作成には相当な労力を要されたんでしょうか。

※ ポジションペーパー = COP10で議論される問題について「がけっぷちの生物多様性キャンペーン」の立場・意見をまとめ提示するもの。

そうですね、さっき文系の人もいると言ったんですけど、個人的に生物多様性に関連する分野を研究をしているメンバーもいるので、知識的なバックグラウンドが全く無いわけではありません。そういったメンバーが調べたり、知り合いの先生に聞いたりして、知識やロジックが補強されたというのが一点あります。

もう一つは専門性が無いなら、大人のNGOとか外部に頼るという手もあって、自分たちの持っている強みは若者に対するチャンネルだとか、自分たちユースとしての声だとか、こっちに人々を振り向かせる要素なので、専門性が無いからやばいという話ではなく、専門性は他のところからもらえばいい。このCOP10の活動で言えば、IUCNという国際的な研究者もメンバーにいるNGOのポジションペーパーやそれに関わっている方にかなりフォローしてもらったり、他の研究、調査もできる規模のNGOや研究機関の調査や考察にかなり依拠していて、それを使わせてもらった部分もかなりありますね。

— 今回の「がけいき」のキャンペーンはCOP10という大きなイベントに焦点を当てて活動していますが、COP10終了後に現在組んでいるメンバーで何かをやるとか、続けていこうと考えていることはありますか。

まだ、かっちりしたものは未定ですね。COP10が目前に迫っている状況でその後のことはまともに議論できていない状況ですね。ただ、選択肢はいくつかあります。生物多様性のCOPは基本的に2年に1回で、今年の名古屋のCOP10の次は2012年にインドでCOP11が開かれる予定になっています。それに向けて準備をしようというのが一つですね。

他には、今の自分たちの活動は、海洋の生物多様性や森林、気候変動と生物多様性がどう関わっているかなど、生物多様性という幅広い概念の全般を追っているんですけど、今後はそれを何かの分野に絞っていくという選択肢ですね。例えばCOP10が終わったら海洋に絞って活動していこうとか。クロマグロがワシントン条約でも問題になったように、たくさん魚を食べている国としての日本の責任はどうなんだっていう話があります。農業はちょっとブームになったんですけど、漁業、林業はまだブームにのれていないので、そうした第一次産業についてユースが考え、主張するだとか、何か生物多様性からもう一つ絞り込んで活動していくっていうのがありますね。その目標がCOP11なのか、それとも別のポイントになるのかはまだ分からないですけど。

他にも、国内政策になる過程を追っていくというのもあります。COPの場で目標が決まって、条約に締約している国の戦略計画ていうものも決まるんですけど、それ自体に法的拘束力はなくて、それを受けて各国がそれを実現するための国内の法制度を整えていきます。じゃ、それが本当に今年決まる目標に即したものなのか、もしかしてそれよりも弱いようなものになる可能性もあるんじゃないか。そういう国内に実際落とし込まれていく過程を追っていくというのも選択肢の一つですね。それをもしかしたら海洋だけについてやるかもしれないし、今取り挙げている問題全てに対してやるかもしれないし。まだ未定ですが、そういった選択肢があると考えています。

— この活動を通じて目指している社会、どういった社会になって欲しいのか、というのを教えて下さい。

団体としては二つ目標を掲げていて、一つは2020年までに生物多様性の損失をゼロにしたい。もう一つは、こういった活動に関わるユースを増やすということですね。生物多様性の損失をゼロにするための行動指針を国際社会として合意を作る必要があって、COP10の機会に合意を作る。それは自分たちがもともと作っている戦略計画の一部分なんですけど、2020年までに損失をゼロにするっていう明確な目標を立てるべきっていう、アドボカシー的な目的です。

もう一つのユースを増やすということなんですが、500人だとか多くのユースを巻き込んだ活動をして、彼らの意識を変えていくっていうのが根本の目的としてあります。

主にその二つが目標なので、目指す社会とすると、やはりそれに即した形、具体的には2020年までに生物多様性の損失がゼロになっている社会、そして長期的に見ても生物多様性の価値が認識されて保全されていくような仕組みのある社会、さらにそういった国際会議だとか仕組みが決まる場面に向けて、多くのユースが動ける社会になってたらいいなと思います。それはユース自身が変わっていく必要もあるし、政府や国際会議などの意志決定する場が受け手としてどう耳を傾けるかっていうのも重要で、受け手側も変わっていって欲しいなと思います。

— ユースでこういった積極的な活動している方もたくさんいらっしゃって、一方で何かに働きかけたいなと思っていても具体的にどう活動すればいいか分からないという人も大学生にはけっこう多いと思います。そういった人に何かメッセージがあればお願いします。

自分自身はけっこういい加減なもので、コンプレックスが活動のきっかけになった部分があります。大学受験で第一志望の大学に落ちてしまったのですが、今通っている大学に受かった時にどうしようってすごく迷って、とりあえず受かった大学に行こうと。けど、そこで終わったら本当にダメだと思って、大学生になったら何かそこで収まらないような活動や生き方がしたくて、その時ちょうど漠然と環境問題に興味があったので、環境ボランティアで検索して今の団体に行き着いたというのがきっかけなんですね。だからきっかけはなんでもよくて、コンプレックスだろうが、人の紹介だろうがなんでもいいなって感じますね。

後はとにかく人に会うことですね。それは同世代もそうだし、同世代だけじゃなくて自分より上の世代の人と接する機会というのはすごく自分の世界が広がるきっかけになると思います。そこから何か自分の潜在的な興味に即した出会いにつながるかもしれないし、そういった場にいられるかもしれないと思います。

(続く »)

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Written by wakamonoiz

2010年10月28日 at 11:47 PM

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